※この回の口調は結構辛辣なものが多いと思う。心のままに綴りすぎるのもどうかと思ったが、伝わりやすそうなのでオブラートには包まないことにした。
とある冬の、悪天候で足元の悪い日のことだった。何となく暇だったので、ドライブに出かけることにした。季節は冬で寒いが、我が子はぽかぽかである。天気も悪いが、我が子は雨風凌いでくれる。つまり、我が子と一緒にいる事はとても快適だということだ。傘も持たずにぶらりと出掛けた。
行き先で何をするわけでもなくぼーっと過ごして帰宅しようと帰路についていた。既に陽は堕ちていた。
信号待ちをしていた。赤信号は、とまれ。なので、皆、停まっている。カーステレオから流れる音楽を聴きながら、しばしぼーっとしていた。嗚呼本日も良きドライブだったなぁ~(´▽`)。我が子に感謝、感謝。
何気にバックミラーに目をやった。というのも、後ろの車のライトが近づいてきたから。あれ、後続車、時速40㎞くらいじゃないかね、おいおい、ちゃんと減速しろよな。やけにスピードが出ていた。えっ、このままだとまずいぞ。停まる気配がない。なんだこいつは!・・・と思ったら、ものの見事に、やられてモーター。
追突されてしまったのだ。そしてワシは、むち打ちに遭った。この瞬間、度々映像で目にしていたマネキンのむち打ちシーンを思い出したと同時にこう思った。ああ、本当にこうなるんだ。マネキンとワシが取って代わって、自分がスローモーションでむち打ちに遭っているシーンを想像した。
また、同時に、色んな事を考えていた。愛おしい我が子が大怪我をした!なんたる悲劇じゃ!!というショックがまず初めに来たのと、正直、こんな事をしでかした後続車の人間を憎らしく感じた。だが、今はそれらはさておきとしておかねばならなんだ。
交通事故が起きたら、まず初めにやるべきことは、怪我人の有無の確認、次に警察に通報、それから保険会社、車屋等関係各所のへ連絡だ。わかっちゃいる。だが、しばし、体が動かなくなった。こうしている間に追突してきたヤツに逃げられたらどうしようかと後ろを気にかけてはいた。だがヤツは動き出す様子も、こちらに安否確認をしにくる様子もない。けったいなヤツだなと思った。だが同時にこうも思った。追突した側の人間が、まさか怪我なんてしていないだろうかね。もしかして意識を失ってしまって、ブレーキ踏めなかった、とかもあり得るし。もしそうならば、動けるようになればどちらかが先に動けばよいと思った。
どうやらワシが先に動けるようになったらしい。我が子から出て後続人の車へ向かった。助手席側からノックしたら、運転者はすぐさま窓を開けた。意識はあるらしい。というか、片手に携帯電話を手にしていた。
心の声:(おい、動けるのなら安否確認くらいしろよ。なんだ、こいつは)実際の声:「怪我してないですか」追突奴:「あ、あ、・・・」頷く仕草が見えた。どうやら怪我はしていないらしい。心の声:(じゃ、電話なんかもって、何やってんだ、こいつ)実際の声:「じゃ、警察に通報してください」追突奴:「あ、あ、・・・」さっきからこれしか言わない。心の声:(おめぇ、手に持っているその携帯電話でさっさとしろよ)だが、一向に動きを見せない。
なんだ、こいつは。・・・この日はこの言葉がよく頭に浮かぶ日だった。
しかし、本当に通報してくれそうにないぞ。こういう時は四の五の言わずに出来る方がやるしかない。仕方がないからワシが我が子の元に戻って自分の携帯電話で通報した。交通事故で通報していること、怪我人が一人(ワシ)いること、現在地、双方の車のナンバー等を伝えた。警察が来るまでのあいだに、保険会社へ連絡を入れ、車屋へも連絡をしておいた。
まだふらふらしていた中で、一応最低限の事はしておいた。だいぶ後から来た警察曰く、この日は交通事故があちこちで発生していて、来るのが遅れたとの事だった。我が子の大怪我ショックに苛まれそうになるのを堪えて、警察の現場検証やらをした。
警察にこう聞かれた。「物損事故か人身事故、どちらにされますか」勿論人身事故だろ。ワシ、むち打ちにあって怪我しているんだから。というわけで、人身事故。
続いてこうも聞かれた。「自走して帰れそうですか」我が子は、走れるだろうが、自分がむち打ちの影響でか非常にふらふらとしており危うかった。救急車を呼ぶかとも聞かれたが、ゆっくり帰ればなんとかなりそうだったので断った。心理的には、我が子と一緒に帰宅することを選んだ第一の理由は、これに尽きる。【大事な我が子が大怪我をして泣いているのに、独りぼっちにはしておけないだろ!】我が子はもちろん泣いてなんかいない。泣いていたのはワシ自身だったのかもしれん。
・・・・で、一同解散。
かなり落ち込んでいるのを奮い立たせて、再び帰路へとついた。動き出した瞬間、ナビゲーションが、こう言った。【この先、事故多発地点です。ご注意ください】
・・・うおぉ・・・っ、うおおおっぉぉっ!!!愛しの我が子ってば!自分が怪我しているのにワシにこんなに気遣ってくれるとは!!なんてイイ子なんじゃぁ~!!⇒事故に遭ってもアホ丸出し。しかしほんとに、目頭があつくなってしまった。
ワシのような人間がクルマに乗っているには、きっといつか、大事をやらかすだろうとは危惧していた。万一の時(物損事故を想定)、自分でやらかして自己の責任において我が子を修理する分には一向に構わない。自分で解決できるから。だからこそ安全運転を常に心がけ、他人様にもご迷惑をかけぬように、と考えていた。だがド派手にやらかしたのはワシではなく赤の他人だった。この事がなんとも不条理でならなかったのは、言うまでもない。何事も、他人が絡むと非常に厄介だな。
続く。