商談・契約を終え、納車まで日数が数か月あった。待ちぼうけをしていたある日のこと。ふと思った。クルマって、誕生日を設けるとしたらいつになるのだろうか、と。ふと思った割に、いつになく真剣に考え始めた。
- 生産工場で出来上がった日なのか。
- 工場から納車地へ運ばれ、オプション装備が完了した日なのか。
- 納車する日なのか。
①~③のうちのどれかだろうと想像した。
で、どれなんだ。そうか、①か②だなと思った。②が濃いぞと思ったので、車屋に尋ねてみた。
が、大まかな日しか判らなかった。大して重要でない戯言に車屋を付き合わせるわけにはいかず、悶々とした。
そんな折、かーちゃんと話をする機会があり、クルマの誕生日で悩んでいると打ち明けた。かーちゃんは上記①~③のうち、③じゃないかと言ってきた。
③なんて、考えもしなかった。しかしその論拠に一同(ワシしかいないが)納得。妙なことで悩む我が子に少々呆れつつ、かーちゃんはこう言った。
「赤ちゃんがお母さんと出会う日が誕生日でしょ。だったら納車日が誕生日で良いと思うけど。ていうかそこまで悩まなくても(笑)」
オォ・・・・おぉ・・・・‘あかちゃん’となっ(°〇°)!!人間を産んだことのある人の言葉はこれほどまでに説得力があるのか・・・・!!一同(ワシしかいないが)驚嘆。
ストンと落ちてきた。加えて、この時からクルマは我が子という意識を持ち始めたのだった。この事は、今後のカー・ライフのキーポイントとなる重要な会話となった。後々かーちゃんは、‘私はとんでもないことを言ってしまった’と後悔するのだが(苦笑)。
クルマというものは、なかなか自分では生み出せない代物である。殆ど必ず、生みの親がいる。購入者は育ての親となるのだ。誕生日に関して、ワシが立脚していたのはさしずめ生みの親説で、かーちゃんは育ての親説だったのだろう。
悩んだ割にはあっさりと決定された誕生日。しかし一同(しつこいがワシしかいない)納得。
こうして無事誕生日が確定され、もうしばらくの待ちぼうけ期間をたのしむことにした。ワシは、もうじき一児の親になる・・・。この時点で既に、クルマ(我が子)への妄想は始まっていたのだった。こうなったら、ゆりかごから墓場まで、ワシなりに大切に、愛ででゆこうではないか。
続く。