車購入の手続きを経て暫くしてから、納車される大体の日取りが決まった。納車の日はしっかりと手帳に記していた。
納車当日となった。納車の前日までは、出張で留守にしていた。ドタバタと仕事をする日々に疲れていたため、出張から戻ると自宅でバタンキューとなっていた。
そんな事情もあってか、なんと納車当日、ワシは今日が納車の日であることを忘れてしまっていたのだった。自宅でぼーーーーー・・・・・・・っとしており、乱れた体調を整えようとして過ごしていたと思う。
そこへ電話が鳴った。時間は確か15時か16時くらいだった。C社の担当者からだった。
「あの~、車、いつ、取りに来られますか」
えっ∑(・▽・)。あっ、そうだった。もうそんな日になっとったか。しまった、ワシとしたことが!あかんやないか(`・□・´)!猛省しつつ、急いで取りに行った。所持品は財布、運転免許証、そしてクルマが好きな友人が呉れた、交通安全のお守り。
店の駐車場では、バリバリ車がお待ちかねだった。感動の初対面・・・という流れにはならなかった。
ここ最近忙しくてあまり自分の事を考えたりする余裕もなく、正直車を迎え入れることの心の準備が出来ていなかった。駐車場借りたりだとか、車庫証明やら何やらといった諸々の行政手続きで手一杯だった。忙殺とはこのことか。今になってもイッタイあの時どうやって生活していたのか、全く記憶にない。
そんな状況だったので。真新しいバリバリ車を目の前にして、体が固まってしまった。
え。ワシ、コレに乗って家に帰らねばならんのか(当たり前だ)。どうしよう。死んでしまう。(真面目にそう感じた)。
・・・・こわい・・・っっ!急に怖くなった。
しかしどうしようもない。一先ず店はさっさと出よう。そのあとの事は、それからだ。
「お世話になりました。ありがとうございます。お邪魔しました(モノトーン口調)」と言って車に乗ろうとした。とそこへ、店の店長とやらが挨拶にやって来た。車を買った客へのパフォーマンスだ。そして店長はこう言った。「この度はありがとうございました~。あれ~、随分緊張されていますね」
確かにワシは、いつも以上に挙動不審だったと思う。店長は即座にこう言った。
「あれでしたら、ウチの営業乗せて暫く走って行かれてはどうですか。このままですと心配ですし」
別に人が横に乗っている・いないは関係ないと思ったので丁重に断ったのだが、「まぁまぁ、どうぞ」なんて言われてしまい、またしても営業は危ういワシの運転で助手席にのるハメになってしまった。
『困ったな、ワシ、一番初めに助手席に乗せるのは親父だと決めていたのだが』・・・親父は嫌がっていたけども、そう決めていたのだ。呆気なく決意は崩された。とは言えこの時ばかりは営業が不憫に思えた。
10分ほど付き合わせてから、ようやくほんとに店を後にした。一旦、ガソリンスタンドへ行き、燃料を満タンにしたところで、お先真っ暗となった。因みに自宅はガソリンスタンドから目と鼻の先の、数百メートルの距離だった。
・・・事故を起こすわけにはいかない。人様に迷惑をかけてはならん。・・・早く帰った方が良いに決まっている。・・・しかし、今更ながら、車庫入れはうまくできるだろうか(コレ、一番のポイント)。・・・ああ、ウチに帰りたくない・・・・!!!・・・どうしよう。
・・・ということで、広々とした駐車場がある公園にやって来た(さっさと帰れよ)。そこで悶々としていた。
・・・しかしいつまでもこんなところでは居られない。・・・明るいうちに帰るべきだ。・・・ここはひとつ、前向きに。・・・帰るか。
ようやく動く気になった。そうなったらなったで、ゲンキンなワシはこう思った。折角だから、買い物してから帰ろう。重い物とか、買ってやろうじゃないか。
ということで、少しだけ気を取り直して普段は行かないスーパーマーケットに立ち寄ってみた。で、ミネラルウォーターやトイレットペーパーをたんまり買ってみた。勿論、特に差し迫って必要ないモノばかりだった。ワシ史上初の爆買いだ。かさばる荷物を後部座席に積んだら、やけに満足した。
少し正気を取り戻したようだ。そこでふと思い出した。そうだ。親父が新生児なる我が子の写真を撮ってあとで見せろと言っていた。
スーパーマーケットの駐車場で、パシャ・パシャリと数枚撮影した。そしていざ、帰宅。
紛れもなくてんやわんやしながら車庫入れを済ませた。多分15分はかかっていたんじゃないかねぇ。何とか位置に収まったバリバリ車をみて、こう思った。
車庫入れって辛い作業だな。もう、二度とココから出したくない。一生ココに飾っておいてあげよう。車庫をあとにする前に今一度、内装やら諸々も、記念撮影して自宅へあがった。
ほんの数時間の出来事だったが、これまた物凄く疲れた。数時間前に遡ったかのように再び自宅でぼーーーーーっとしていたら、電話が鳴った。C社の営業からだった。
はて、まだ、何か用があるのか。一体何なんだろう。少しばかり気を奮い立たせて応答したら、営業は、こう言った。この言葉は忘れられることなく脳裏に焼き付いている。
「あの~~~・・・、あのあと、大丈夫でしたか。 お店の皆で心配していました」
この日のエピソードを、後日になってお守りを呉れた友人に報告した。
ワシ:「かくかくしかじか。ワシ、あの日、どこか挙動不審だったわ。しかし、どっと疲れたわい」友人:「えっ、オマエなんか普段から挙動不審なのに。一体全体、どんだけだったんだ。見ていたかったわ」大笑いされた。ワシには親父の他にも周りには頼もしいカー・アドバイザーがいるので、有り難い。
一生車庫に入れたままにしておこうと誓われてしまったバリバリ車。いつになったら動く日が来るのやら。今後のバリバリ車ライフが思いやられる。
やれやれ・・・続く。