セイコー初の腕時計型クロノグラフにして、セイコークラウンをベースとしたクロノグラフ機構を搭載したモデルです。
別名「ワンプッシュクロノ」とも呼ばれ、一つのプッシュボタンでストップウォッチ操作を行うシンプルな機構を備えます。他メーカーでもワンプッシュ式のクロノグラフはありますが、ワンプッシュクロノと言えば、セイコーのクラウンクロノグラフを思い浮かべる人も多いのでは。
クラウンクロノグラフは、クロノグラフにらしからぬシンプルな文字盤と現行機にない素朴さを醸すベゼルに味わい深さを感じます。
私もこの時計が好きで、初期型のプラスチック製ベゼルと東京オリンピック後に販売された金属製ベゼルのものを所持しています。中古品を購入しており、普段使いもしているため綺麗な状態とは言えませんが、写真を踏まえながら雑談を書いてみました。
目次
- 初代クラウンクロノグラフの製品仕様
- 色んな角度から撮ったクラウンクロノ
- ごてごて感がないのが魅力
- 裏蓋の違い
- ベルトは非純正品
- 剥げやすいプッシュボタン
- かまぼこ型の風防も魅力
- 2020年クラウンクロノグラフのデザインを模した数量限定モデルが販売
- 海上自衛隊支給モデルもある!?
- 中古市場の価格帯
- あとがき
初代クラウンクロノグラフの製品仕様
名称 | クラウン ワンプッシュクロノグラフ(初代) |
---|---|
型番 | 45899 |
製造年 | 1964年3月製造 |
外径 | 37.6mm(リューズ除く) |
素材 | ステンレス |
風防 | プラスチック |
ムーブ | 手巻き機械式 / 5719A |
仕様 | 非防水 |
写真は私が保持しているもの。こちらは中古品を購入しています。(15年くらい前に購入。価格は5万円程度)
ベゼルの割れは元々あったものですが、古い物なので普段使いされていたとなるとこういった痛みは仕方ないものですね。私も普段使いしていますが、今のところ外観は変わらず保ってくれているところです。
それから後期型。
名称 | クラウン ワンプッシュクロノグラフ(後期) |
---|---|
型番 | 5717-8990 |
製造年 | 1964年12月製造 |
外径 | 37.6mm(リューズ除く) |
素材 | ステンレス |
風防 | プラスチック |
ムーブ | 手巻き機械式 / 5717A |
仕様 | 非防水 / カレンダー |
こちらも同様。中古品で購入したものです。(15年くらい前に購入。価格は6万円程度)まずまずの状態。一度ゼンマイが切れてしまい修理とオーバーホールに出しています。(修理代は3万円程度)こちらはカレンダー機能が新たについています。
色んな角度から撮ったクラウンクロノ
この見た目が好み。そんな方も多いはず。
ごてごて感がないのが魅力
一見、クロノグラフとは思わないようなシンプルな文字盤。ベゼルのダイヤルも目盛りこそありますが、ごてごてした様子はなくすっきりしたデザインです。文字盤はセイコー定番のバーインデックスで時計としての視認性では、クロノグラフの中でも最高峰と言えるでしょう。(私が勝手に言っています)
この一見クロノグラフに見えない見た目がよくて、また、サイドにごちゃごちゃとプッシュ機構が備え付けられていないところもポイント。現行品のよくあるクロノグラフは、スタートボタンとリセットボタンの二つを右側に備えるものがほとんどで、ワンプッシュであること自体がありません。もちろん、ワンプッシュであることで、スタートとリセットを一つのボタンで操作しないといけなくなるわけですが、この時計を使う人でストップウォッチにこだわりを見出す人こそレアでしょう。
クロノグラフにして、シンプルな文字盤にベゼル、現行品にはほとんど見られないワンプッシュの配置。
これが好みな方は結構多いんじゃないかと思っております。
裏蓋の違い
裏蓋のデザインは、プラベゼルが聖火マーク。金属ベゼルが竜の落とし子。1964年東京オリンピック開催に合わせて販売されたモデルには、聖火マーク。オリンピック開催後に販売されたモデルには、竜の落とし子がデザインされています。(もっと細かい区分けがあるのかもしれませんが、大体あってると思います)
ベルトは非純正品
どちらも購入時についていたもので、クラウンクロノの純正品ではありませんが、セイコーのステンレス製のベルト装着しています。
中古市場に出回る品は、デッドストックや保管品のような状態がいい物以外は、ベルトが純正でないことが多いようです。できれば純正のベルトが欲しいところですが、いかんせん部品が出回ることもほとんどありません。状態の良し悪しは本体を見るに限るとは思いますが、ベルトも大事ですね。所有者が大事に使ってきたものであれば、純正でなくともセイコーのベルトを装着していたりします。
剥げやすいプッシュボタン
ストップウォッチの機能は使わずとも経年劣化で剥げやすいのがプッシュボタンです。
ボタンを使わなくてもコーティングが剥げてきてしまいます。(元々は剥げていなかった)普段使いしていると仕方ないものですね。大事にしたいものです。
また、購入を検討する際、意外と目立たないところですが、この剥げの有無も少しチェックしてみてもいいかもしれません。
かまぼこ型の風防も魅力
この、ぼこっとした形状の風防も魅力。これもいいんですよね。
2020年クラウンクロノグラフのデザインを模した数量限定モデルが販売
画像は、セイコー公式HPより。URL -> https://www.seikowatches.com/jp-ja/products/presage/2020_limited_edition
メカニカルムーブメント6R35搭載。ダイヤルカラーに、アイボリー・グリーン・ブラックの三色のラインナップ。数量限定 各1,964本。
初代「クラウンクロノグラフ」のデザインを忠実に再現した、リメイク品。
実のところは、私はこちらの限定モデルの販売があったのを今の今まで知らなかった。(欲しかった・・・)ただ、フリマサイトやオークションで探してみるとそれなりに出回っているので購入自体はできそうです。(しかも定価より安価に出品されてる)
私が単にこのモデルを好きだからかもしれませんが、数量限定であるしその数も多くない、ベゼルや文字盤も当時のものとほぼ近いデザインも素晴らしいもの。
でも、中古市場での価格は、定価を割っている。プレミアがつくようなものでありません。(今のところ)同時期に販売されたSARK015(SEIKOクロノグラフ55周年記念限定モデル)も同様にプレミアがついてはいませんでした。
私のようなこのモデルが好きな一部の人には本当に欲しくなるような製品ですが、一般的な評価はそれほど高くはないのかもしれません。
ただ、製品仕様をよく見てみるとケース径が大きいです。初代クラウンクロノグラフが、約37mmであるのに対し、2020年に販売されたモデルは、41.3mm。(SARK015はさらに大きい42.3mm)これは大きな違いで、当時のあのサイズ感が良かったと感じる人にとっては、大きすぎると思います。
昨今、特にクロノグラフに見られがちなやや大き目なケース径ですが、忠実な再現とするならば、現代的な感性は取り入れて欲しくなかったと思いました。
本当に忠実に再現ということなら、「復刻」という言葉を使ったと思いますが、オマージュやリメイクといった表現をされているところを見ると、「初代クラウンクロノグラフのデザインを元に現代風に製作した新製品」が正しいところだと思います。
海上自衛隊支給モデルもある!?
確かオークションで見かけた記憶があって、調べてみたところ海上自衛隊に支給されたクラウンクロノグラフもありました。
1960年代後半に支給されたようで、製品版との違いは、文字盤と裏蓋。
文字盤には、「USE FOR M.S.D.F.」とあり、海上自衛隊仕様であることの明記。(M.S.D.F.は、海上自衛隊の略称)
裏蓋の桜に碇、船の帆は、海上自衛隊のロゴマークと共に「海上自衛隊」の刻印。
このような細部の違いになるようですが、特別仕様というのには違いがないと思います。
海上自衛隊支給モデルは、時計好きの方より自衛隊関連品のコレクターの方が収集している可能性もありそうです。
中古市場の価格帯
私が購入したのは15年くらい前。前述くらいの状態の物で、
プラ製ベゼル -> 5万円程度金属製ベゼル -> 6万円程度
でした。
これがデッドストック品のような状態の良いものになると、20万円を超えてきます。私が所持しているものと同程度のものでも今の価格帯は、8万円前後くらいが相場のようです。
年代を重ねてやや値上がり傾向にあります。
中古市場に出回る数としては、それなりに見られるものですが、状態の良いものが出回ることは多くなく、また、価格も高額設定がほとんどのようです。8万円前後のまずまずの状態の品となると、年に何回か出回ればいい方なのが現状のようです。
あとがき
現行品にない良さが随所に見られる時計が「初代クラウンクロノグラフ」だと思っております。
いい時計はいっぱいありますが、人とは少し違った時計が欲しいという人にいいですよね。
ロレックスよりチュードル、海外メーカーより国産メーカー、現行品よりアンティーク。
そんな感性の人に分かってもらえる時計では。
「マニア垂涎の非常に貴重な逸品」(中古時計店の煽り文)は、言い過ぎだと思いますが、結構貴重な時計だと思っております。