『人類の存亡をかけ、今こそ決起せよ!』
信長の野望や三国志で知られるコーエー(光栄/koei)が手掛けた戦略シミュレーションゲーム「戦士の決断 combat force」です。光栄にしては珍しいオリジナルシナリオによるシミュレーションゲームで、人類とエイリアンとの戦争を描いた作品であるのも時代を感じさせるかもしれません。
さて、往年の光栄ユーザーでも知る人ぞ知るというのは、続編が作られることもなく、家庭用ゲーム機に移植されることもなく、復刻版もなく、アーカイブスパックにも未だ収録なしというのが物語っていると思います。しかしながら、古き良き作品と思えるのは、光栄らしいゲームシステムとそれを支える味のあるストーリーが随所に見られるからだと思います。
埋もれた名作・・・は、言い過ぎかもしれませんが、埋もれた良作と言いたくなる昔のWindowsゲームだと思っております。
目次
- 戦士の決断 Combat Force 製品情報
- 人類の存亡に焦点を当てたメインストーリー
- エイリアンの取り巻く事情をサイドストーリーにて
- 40人のメインキャラクターとバックストーリー
- 豪華な制作人の顔ぶれ
- 時代を先取りした?リアルタイムによる戦闘システム
- ゲームの流れをゲーム画面にて
- キャラメイク
- レジスタンス戦
- 新たな仲間との出会い
- 隊員育成と兵器開発
- エイリアンの侵攻と新型兵器の投入
- 軍隊戦(地上戦)
- 軍隊戦(艦隊戦)
- ゲームシステムの問題点
- おいおい!そっちに行かないでくれよ。リアルタイム戦闘の悲哀
- 3部隊を同時にリアルタイムで指示する難しさ
- 育成のしやすさが個性を犠牲に
- 強すぎた戦闘機
- 内政的な要素は少ない
戦士の決断 Combat Force 製品情報
メーカー | コーエー(光栄/koei) |
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発売日 | 1999/05/28 |
定価 | 9,800円(税抜) |
ジャンル | タクティカル・ウォーゲーム |
対応機種 | Windows95/98 |
動作環境について(Windows7/10起動不可)
本作品は、Windows7、Windows10のOSでは、動きません。インストールは可能でしたが、ゲームを起動すると強制終了してしまいました。互換性モードで起動しての結果です。現状、プレイするにはWindows95または98のパソコンかこれらOSの仮想環境を構築しないと動作は難しいと思います。
人類の存亡に焦点を当てたメインストーリー
『200X年、圧倒的な破壊力を備えた大型宇宙船が飛来。エイリアンたちによる徹底的な殺戮と、絶望の淵に立つ人類による決死のレジスタンス戦が始まった。人類の危機をドラマチックに描くウォーSLGの白眉!』
パッケージ背面にあるストーリー説明では、このように綴られますがゲーム本編の開始時には詳細な背景が語られます。
1999年の作品ということで、終末的な考えが世間でも流れていた時代でもあり、時代に即したストーリーとも言えそうです。例えば、当時の映画であれば、インデペンデンス・デイ(1996)を思い浮かべますし、少し後の作品であれば宇宙戦争(2005)も代表作だと思います。昨今は宇宙人やエイリアンが登場する映画は少なくなっているかもしれませんが、1980年代や90年代は全盛期でしたね。「エイリアン」「遊星からの物体X」「メン・イン・ブラック」、もう少し遡れば「未知との遭遇」「猿の惑星」を思い浮かべる方もいらしゃるかもしれません。テーマとしては、よく見聞きしたわかりやすいものとも言え、分かりやすい目的であるのもゲームに適した題材であったのかもしれません。
本作、戦士の決断のメインシナリオを手掛けられたのは、横山宏(よこやまこう)氏。代表作は、「マシーネンクリーガー(S.F.3.D ORIGINAL)」オリジナルSFメカデザインの名手で、スーパーファミコン「FRONT MISSION」のヴァンツァー(機動兵器)、プレイステーション「カルネージハート」のOKE(オーバーキルエンジンと呼ばれるロボット兵器)のメカデザイナーとしても知られています。
エイリアンの取り巻く事情をサイドストーリーにて
ストーリーは人類側の視点で描かれますが、敵となるエイリアンにもサイドストーリーがきちんと作られているのも印象的です。戦士の決断には『COMBAT FORCE MUSEUM』と題してサブマニュアルが付属しますが、そこにはゲーム内では触れられないエイリアン側の侵略の事情が語られます。
なぜ、エイリアンは地球に侵略してきたのか?なぜ、人類を絶滅まで追い込もうとするのか?
このような疑問への解が綴られているわけで、人類視点では遠い宇宙から地球征服しにやってきたにすぎない生命体にもその理由があり、行動を起こすに至る背景があります。
ゲームで操作できるのは人類側のみですが、エイリアン側の諸事情を知ると反対の立場でのゲームプレイも面白さがあったのではないかと感じるところです。
40人のメインキャラクターとバックストーリー
主人公である松永英司以外にも、世界各地にはエイリアンに抵抗する人々が存在します。その数40名。これらのキャラクター達にはそれぞれのバックストーリーがあり、戦う理由がゲーム内で語られていきます。多くは、仲間になる際にイベントが発生し明らかになるものですが、中には志半ば、あえなく戦死を遂げられる間際の最後の言葉として残されることもあったりします。
プロフィールを含め一人一人にバックストーリーを持たせることで個性を感じ、プレイヤーの好みで優先して育成をしていくのも楽しみの一つだと思います。
本作のようにオリジナルキャラクターに個性や魅力を持たせることは、キャラクターデザインの難しさがあるところだと思います。その中でも一人として似通るキャラクターがいることはないのも魅力の一つだと思いました。
本作のキャラクターデザインは、今敏(こんさとし)氏によるものですが、同氏のアニメーション作品の「パプリカ」「東京ゴッドファーザーズ」「千年女優」「PERFECT BLUE」は、国内のみならず海外でも高く評価される先鋭的な作品です。ご存知の方も多いと思います。
本作の写実的なキャラデザインも作品にマッチしたものと感じます。
豪華な制作人の顔ぶれ
前述の通り、本作の制作陣はかなり豪華な顔ぶれです。
シナリオ、横山宏(よこやまこう)氏。キャラクターデザイン、今敏(こんさとし)氏。エイリアンデザイン、村田護郎(むらたごろう)氏。パッケージ表紙イラスト、遠藤雄一郎(えんどうゆういちろう)氏。
また、マニュアルの本文デザインにも大久保友博氏(島津デザイン事務所代表取締役)が手掛けており、本の装幀・グッズ・パッケージ等でご活躍される方によるものというのも見所ありだと思います。
こうした業界をリードするクリエイターやアーティストが多数参加されているのをみるに、光栄としても力の入る作品であったのではないかと思うところです。
時代を先取りした?リアルタイムによる戦闘システム
本作品の発売は、1999年。リアルタイムによる戦闘システムが採用されていますが、当時としては珍しいと言えるかもしれません。というのも光栄の代表作である信長の野望で言えばこの頃はまだターン制が全盛。ちょうど烈風伝の頃なので箱庭内政の楽しいゲームでした。また、三国志も6や7の時代。リアルタイム制の導入までは三国志9まで待たなければなりません。
リアルタイム戦闘の仕組みが成熟していない頃のシステムとも言えるため、粗削りと感じる方も少なくはないでしょう。例えば、レジスタンス戦であれば事前にどの場所に移動させるか、どの敵を攻撃するか、どのオブジェクトに攻撃するかを選べます。その後、戦闘が開始されれば指示通りに部隊が動きますが、ゲーム内の進行速度は一定です。遅くしたり早くしたりもありません。部隊に都度命令を出したい場面も少なからずあるため、この操作になれるまでは思い通りの戦局を描くのは難しいと思います。
プレイヤーの基本視点は、本部で部隊を指揮する司令官的な立ち位置です。戦闘開始前の作戦立案が主な役割で、いざ戦闘が始まった後はおおまかな指示は出せるものの、基本的には個々の部隊の働きに任せるというものだと思います。
また、戦闘中にキャラクター固有のスキルを発動したり、部隊同士の連携技が使えたりということもありません。
シンプルであるがゆえに地味さはぬぐえませんが、作戦次第では敵を孤立させたり、挟み撃ちにしたり、全員で待ち伏せして蜂の巣にすることも可能です。慣れが必要なことは否めませんが、プレイヤーの作戦次第では有利に進めることも不利な状況から挽回することもできる点は、黎明期のリアルタイム制バトルの中でも奥深さを感じられる点が見られるものと思います。
ゲームの流れをゲーム画面にて
キャラメイク
キャラメイクは、主人公のみ。まずは名前と職業を選択できます。
職業は、軍人職ももちろんありますが、多くは一般人。戦争に向いた都合の良い職業ばかりを並べていない点もリアリティを感じます。
能力の決定は、光栄おなじみのランダム生成。職業によって上限下限が設定されていて、その範囲内でランダムに数値が決まるシステム。
これ、ものすごく好きなシステムです。ついつい上限ギリギリに強くしたくて、ずーっとやってたりします。ゲームが始まらない。
レジスタンス戦
都市解放を行うためのレジスタンス戦。小人数の市街戦が繰り広げられます。
戦闘開始前に部隊の行動を決める作戦指示。ここで決められた作戦に従って部隊が動きます。ただし、この時点では敵の配置(どの部隊がどこに配置されているか)は不明。慎重にいくなら戦闘を開始してから改めて作戦を練り直すのもあり。
戦闘が始まれば基本はオート。リアルタイムで進んでいきます。
新たな仲間との出会い
都市を制圧すると新たな仲間との出会いもあり。メインキャラクターはイベントで仲間になります。また、採用コマンドで現地招集も可能。基本は職業や性別もランダムですが、採用を担当する隊員と同じ職業の人を見つけてくることが多いです。
隊員育成と兵器開発
都市解放が進むと隊員の育成が可能になります。体力は180まで、速度は80まで、その他能力値はBまでといった上限はありますが、そこまでは訓練施設で育成できます。
兵器開発は、資源を使用して行います。レジスタンス戦に必要な兵器と軍隊戦に必要な兵器に分かれているので、どちらを優先すべきかは戦局を見極めながら開発を行います。
エイリアンの侵攻と新型兵器の投入
人類側の反攻にエイリアンも指をくわえて待っているだけではありません。都市での人類抹殺や新型兵器の投入を行ってきます。
軍隊戦(地上戦)
都市解放が進み人類側の軍備が整うまでになると、今度は主要拠点を巡る軍隊戦に移行します。
軍隊戦(艦隊戦)
都市解放、軍隊戦で勝利を重ねると、海上艦隊を率いて戦う場面も訪れます。空母打撃群の準備が整ったら、ハワイなどへ海戦をしかけます。
ゲームシステムの問題点
昔のゲームにありがちな?ちょっと不便なシステムなど。
おいおい!そっちに行かないでくれよ。リアルタイム戦闘の悲哀
手前の敵を相手にするより、奥にあるエネルギー装置から壊した方がよさそうだな。ここは迂回するように移動ルートを決めて、エネルギー装置を壊してから各個撃破と。
・・・いざ、戦闘が始まってみれば。
え、そこ真っ直ぐ行かないの!?そっちに行かれたら別の敵と交戦しちゃうッ!あッアッーッ..ちょっと待ってよ、そっち行かないでッ、はぁ~もう。。
こんなシーン幾度とありました。思うように動いてくれないことが結構あるんですよね。前がちょっと詰まると迂回して動くみたいなんですが、場所によってはものすごい遠回りをしたりします。その過程で別の敵と鉢合わせ。各個撃破どころかこっちが憂き目。戦闘は泥沼です。
いやいや、想定外の動きをしたら部隊に指示出しましょうよ・・・と思うでしょ?でもね、間に合わないことが多いですよ。なんせ、一時停止やポーズみたいな機能ないんですから。まあ、ないといっても作戦指示の画面を開けば止めることはできるんですけどね。ただそれだと部隊に細かい指示が出せない。
やっぱり、基本はリアルタイム戦闘なんですよ。一時停止もなければ、ゲームスピードを落とすこともできない。戦闘が始まってしまえばそう簡単に終わらない、止められない。
プレイヤーの視点は、作戦本部で作戦指示する人って考えるとそうなんですね。戦闘中の部隊への指示は、トランシーバーといった無線を介して指示をしているようなものなんだと思います。そう考えれば、確かにそう。そんな都合よく戦闘をすすめられるわけもない。わかります。
ただですね、結構多いんですよ。そっち行かれちゃうと敵の射程範囲入っちゃうとか、こっちの長距離射程の武器で攻撃しはじめちゃうとか。そこは敵に気付いても素通りしてもらって・・・なんて都合のいい話なかった。(ちゃんと疾走という指示を出せば、敵に見つかっても無視して進むこともできますが、そこまで戦場も広くないので常に疾走指示というのも難しい)
3部隊を同時にリアルタイムで指示する難しさ
上でも少し書きましたが、基本は一時停止、ポーズの機能がありません。戦闘を止めたい場合は、作戦指示画面を出す必要があります。
このため、戦闘が始まった後に個別に指示を出すとしたら1部隊ずつになるわけで、これが乱戦みたいになってしまうとまず収拾がつかない。ゲームスピードを遅くすることもできないので、指示がおっつかない。
特に難しいのが、部隊を二手に分けた場合。片方は左から、もう片方は右から攻めるなどの作戦を立てると、片方の指示をしていたらもう片方が大変なことになっていた・・・なんてよくあります。エイリアン側が弱い序盤はそんなに困ることはないのですが、中盤以降、エイリアン側も強化されてくると先頭の隊員はすぐにやられます。交戦中に押したり引いたり、おびき寄せたりを柔軟にこなせればいいのですが、あわただしくなってしまって簡単ではないのが難しいところです。
他にも、インターフェースの問題もあって、こっちの部隊に指示したつもりが、実はこっちの部隊への指示だったなんてこともあって、操作は慣れるまで結構大変ですね。
育成のしやすさが個性を犠牲に
これは良し悪し。育成は簡単で、訓練施設に二週間ほうりこんでおけば、必ず能力が上昇します。それも、キャラクター毎に成長限界は設けられていないので、どんな職業のキャラクターであろうとも、訓練で育てられる限界までは誰でも育成可能です。(体力180、速度80、その他能力値はBまで)また、訓練施設以外の命令でも能力は上昇するので、使っているうちに自然と成長する育てやすさもあります。
育成のしやすさは好きなキャラクターを育てる分にはいいのですが、ゲーム終盤ともなるとほとんどの隊員の能力がB以上であったりもします。
一部のキャラクターにスキルや得意武器を持っていたりしますが、それくらいしかキャラ差が出なくなるのもあって、能力面では個性が薄れてしまい面白味に欠ける面もあるのかなと思いました。
強すぎた戦闘機
軍隊戦は、戦闘機4部隊編成でゴリ押し。艦隊戦もほぼ同じ戦略で十分。
特に兵器開発が進んだ終盤は、攻撃機が強くてこれだけで十分だし、これがなければ勝てません。
これは、地上部隊の主力である戦車が弱いというか、戦車主体での攻略が難しすぎるのが原因なのかもしれません。もしかすると私のやり方がまずかったのかもしれませんが、大抵は地上部隊で攻めあがっていくと集中砲火を浴びて気付くと部隊が全滅。長距離射程の待ち伏せ戦術が強すぎてどうにもなりません。
途中で、戦闘機を4部隊にして討ち漏らした地上部隊を待ち伏せして掃討する作戦でやっていました。
内政的な要素は少ない
内政的な要素は、都市の支援と復旧くらい。支援で兵力を補充し、復旧で資源の取得料を増加させます。都市の開発(復興)といった観点であれば、資源のパラメータだけ。あとは兵器開発くらい。
また、外交要素は全くなく、エイリアン相手なので交渉の余地はありません。
ゲーム的には、あくまでエイリアンに支配された都市や軍事拠点の奪還がテーマで、都市解放してからの復興にはフォーカスされていないということなのでしょう。
あれこれ書きましたが、個人的には結構好きなゲーム。今のゲームみたいな洗練されたものでもないし、粗削りな面も多い作品。でも、今の時代にあらためてプレイしても楽しめるんですよね。ゲームの目的がはっきりしていて、入り込みやすい。目的に沿ったゲームシステムになっているので、やる事は限られてもやる事はぶれない。シナリオは、人類視点の一本道。勧善懲悪のわかりやすさ。キャラクターも味がある。
それと、ゲームの難易度は選んだりできませんが、縛りプレイで難易度は自由に変化可能。というのも、ノーリセでやった時の難易度のやばさ。レジスタンス戦もコロッと負けるし、負けた時には犠牲者が出ます。ビビッて慎重になると人口が減るし、本当に滅亡まで追いやられます。でも、リセットしないとどうにもならないかと言えばそうではなくて、なんとかここを耐えれば、ここを落とせれば持ち直せる、戦える。そんな緊迫したプレイができる絶妙な難易度のゲームバランスもよくできているんだと思います。
再販もなく、今のところ古いOSでしかプレイができないのでハードルは高いのですが、もしプレイできる環境にあれば、古き良き光栄のシミュレーションゲームを味わえると思います。