賃貸借契約書に設備が書いてなかったら契約しちゃダメ!

 賃貸マンションや賃貸アパートを借りようとしている方。申込をして、審査が通り、いざ契約に進んだ段階で、賃貸借契約書に設備が何も書かれていない、または、物件情報にあった設備の記載がないものがある。こんなこと、ないでしょうか?

私も引っ越しをしようと賃貸物件を探している中で、契約まで進んだ段階で設備が何も書かれていない賃貸借契約書を渡されたことがあります。

もちろん、なぜ書いてないんだろう?素朴すぎる疑問でした。

だって、書いてあったのがこれだけでしたから。

  • マンション名
  • 鉄筋コンクリート
  • 何階の何号室
  • 平米数
  • 間取り

え!?トイレは?浴室は?エアコンは?
他にもオートロックやら照明も付いてたんですけど・・・。

先に結論から

賃貸借契約書に設備が書かれていなかったら、絶対に契約しちゃダメ!

実際にある設備を必ず書いてもらいましょう。

重要事項説明書に設備の記載があっても、賃貸借契約書に記載がなかったらダメです。

以下、詳しく理由を説明するとともに、「宅地建物取引業協会」に問い合わせた結果を載せます。



重要事項説明書と賃貸借契約書は目的が違います。

重要事項説明書は、重要なことを説明する書類です。
契約書ではありません。
貸主と確認し合う書類ではありません。
宅地建物取引士と借主が確認するもの。
書類の控えも宅地建物取引士が従事する会社(仲介業者)と借主が保管します。貸主には書類がわたりません。

一方、賃貸借契約書は、貸主と借主との間の契約書。こちらが貸主と契約を交わす書類になるので大事なのはこっちです。
いくら重要事項説明書に書かれていても契約書に書かれてなければ本当は意味がありません。重要事項説明書の書類は、貸主にはわたりませんし、貸主は記載内容なんて知らないこともあるわけですから。

賃貸借契約書に設備が書かれていなかったら最悪どうなるのか

私の受け取った賃貸借契約書のケースで言うと

  • マンション名
  • 鉄筋コンクリート
  • 何階の何号室
  • 平米数
  • 間取り

だけですね。風呂もトイレもありません。ですので、この物件に風呂もトイレもなくてもいい物件ってことです。(最悪な場合)
もちろん物件を事前に見ている人が多いと思いますので、自分の目で見て、風呂もトイレもあることはわかっていると思います。

でも、賃貸借契約書に書かれていなければ、壊れた時に修理しなくても文句は言えなくなりますよね。

それに、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などが備え付けで設備としてあった場合、賃貸借契約書に記載があれば、壊れた時に貸主が修理する必要があります。ですが、書いてなければ最悪修理しなくても問題ないんです。

これは設備じゃありませんよ。前の人が残していったものですよ。壊れても責任取りませんよ。

ということができるってことです。

貸主からはもちろん設備としてあるし、壊れたら修理もします。と口頭で言われたけど

だったら賃貸借契約書に設備として書いてもらっても問題ないですよね。
だって、この物件の設備だし、壊れても貸主が修理するし、安心してください。ってそこまで言うならね。

私のケースだと、そこまで説明するくせに、それなら賃貸借契約書に設備を書いてください。って言っても頑なに書いてくれなかったんです。

では、なぜ貸主は賃貸借契約書に設備を書かないのか

民法第611条に「賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等」の条文があります。

(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
民法第611条
賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる

例えば、お風呂が使えなくなってしまった場合、貸主は賃貸物件の設備であるお風呂を修理しなくてはいけません。さらに、お風呂の修理に時間がかかってしまった場合、当然使える設備が使えなくなってしまったんですから、困りますよね。不便になるのはもちろん、銭湯に行かなければいけなかったり、余計な費用もかかります。

こうしたことを踏まえて、「賃料減額の請求をすることができる」のです。
どの程度減額されるのかについては、「日本賃貸住宅管理協会」がガイドラインを作成しています。

お風呂の例で言えば、

風呂が使えない場合は、賃料の減額割合10%・免責日数3日

となっています。免責日数3日というのは、すぐには修理できないから借主も3日は我慢してね。という猶予期間です。

家賃が10万円でお風呂が10日間使えなかった場合、どの程度、賃料が減額できるか計算すると

100,000円÷10%÷30日×(10日-免責期間3日)=約2,333円

賃料の減額請求をすれば、家賃が2,333円減額してもらえるということです。

設備に書いていなければ、その物件の一部ではないから賃料減額の請求対象外です。なんて言うことだってできますね。


第611条に関しては、2020年に改正予定

現行法では、「賃料減額の請求をすることができる」ですが、
改正後は、「賃料を減額しなければならない」です。
請求せずとも貸主は賃料を減額する必要があります。


貸主にしたら、賃料が減額されることは避けたいですよね。
今までだったら滅多なことでは減額請求もなかったので、賃料の減額をすること自体がなかったかもしれません。
改正後は、設備が一定期間使えなくなったら、必ず家賃を減額しなければいけません。全戸でトラブルになった時は、全戸で減額になります。

これは貸主としては避けたい気持ちはあるでしょうね。

おそらく賃料減額の条文があるので、設備として記載するのを頑なに拒否したんじゃないかな。って思っています。

あとは、一人だけ例外を作ってしまうと、他の方がこのことを知ってしまった場合・・・賃貸借契約書を訂正してくれ。と言われかねませんよね。もちろん悪意がなかった場合でも他の入居者から訂正をしてくれ。なんて言われたら手間だし大家としては嫌でしょう。

「宅地建物取引業協会」に問い合わせた結果、QA形式で

※設備に関することの他、違約金に関しても問い合わせましたので合わせて載せておきます。

Q=私の問合せ・質問内容
A=宅地建物取引業協会相談窓口のご担当者様回答


Q. 設備に関して、一般的な賃貸借契約で、記載はしないものなんでしょうか?

A. 記載しないということはない。通常はトラブル防止のためにも記載する。記載がなかった場合、最悪のケースだと修理をしてもらえない場合がある。ただし、大体の賃貸借契約書には、「協議」の条項があり、契約書に記載のないものや解釈が曖昧なものについては、協議の上、対応を行う旨の条項があるため、設備の記載がないからといって、修理をしない、対応をしなくていいというわけではない。

また、設備の記載がなく「協議」の条項がなくても、貸主には修繕の義務があり、修理をしなくても良いということにはならない。

(賃貸物の修繕等)
民法第606条
賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

上記、民法があるとは言え、もし修理をしてもらえなかった場合、修理や賃料の減額の請求を行うには、裁判を起こすしかない。(借主が裁判を起こしてまでは、請求してこないだろう。とたかをくくっているケースもある)

なお、設備に記載がないからと言って、法的に問題があるわけではない。


Q. 賃貸借契約書に設備が記載されていなかった場合、トイレやお風呂が使えなくなって修理の間まで1週間など不便した場合、賃料を減額してもらったりはできますでしょうか?

A. 同上。賃料の減額請求を行えば、設備を利用できなくなった相応の減額をされることが考えられる。応じない場合は、借主は裁判を起こすしかない。


Q. 賃貸借契約書に
「契約満了前の途中解約の場合は、違約金が発生する」
と記載があったが、貸主に確認したところ
「24か月以降の途中解約では、違約金の発生はない」
と口頭では伝えてもらった。

賃貸借契約書の記載では、24か月以降の途中解約でも違約金が発生すると読み取れるので、回答の内容を賃貸借契約書の特約事項に追記をしてもらうよう伝えたが断られた。この場合も万が一、24か月以降に途中解約した場合、違約金を請求されたら払わなくてはいけなくなるか?

A. 賃貸借契約書の全ての内容を確認したわけではないから、はっきりとは言えないが、請求されたら払わないといけなくなるかもしれない。納得いかない場合、借主は、裁判を起こすしか対処法がない。
(逆に違約金を払わなければ、貸主が裁判を起こすことになる)


宅地建物取引業協会相談窓口担当の方の最終的なアドバイス

契約はしない方がいいと思います。仲介業者も変えてみることをおすすめします。

仲介業者を変えた方がいいというアドバイスについては、賃貸借契約書を仲介業者が作成されているケースも多く、紹介している物件が、仲介業者が直接取り扱っている物件の場合、同じような賃貸借契約書になっている可能性が高い。ということでした。

私のケース。結局、賃貸借契約書に設備を書いてもらえなかったのでキャンセル

私の場合は、申込をし、審査が通り、賃貸借契約書に署名・捺印をする段階でこのことがわかり、設備を書いてもらうように再三にわたり依頼をしました。それでも書くことはできないと言われ、

  • 重要事項説明書に記載している。
  • 物件を見てもらった通り、もちろん設備としてついている(ついてないなんてことはない)
  • 壊れたら当然修理は行います、何も問題ありませんよ。
  • いちいち細かい内容まで書けない。
  • こちらとしては記載する必要性を感じない。

こんな理由でした。そして、不毛なやり取りがこの間あり・・・こちらも食い下がりました。

  • 重要事項説明書は、貸主と交わす契約書でもなんでもないので、これに書かれても意味がない。
  • 物件についているし、修理もしてくれるという話なら、賃貸借契約書に設備を書かない理由がわからない。
  • 細かい内容の記載は頼んでいない。物件にある設備を記載をしてくれと頼んでいる。
  • 記載する必要性は、こちらがある。

賃貸借契約書の記載の内容で契約を交わすのだから、設備も正確に記載してもらわないと困る。そういった設備を含めて賃貸契約を結ぼうとしている。

などと、こうしたやり取りがあっても絶対に設備を書こうとしませんでした。
最終的には、私の方からキャンセルをしました。

設備の書かれていない賃貸借契約書、書いてくれない貸主に出会ってしまったら

それでも、その物件に入居したいかどうかでしょう。

私の場合は、5、6件物件を見てまわった結果、一番気に入った物件がこの物件でした。
もちろん入居をしようと考えていましたし、現在住んでいるところの退去日や引っ越し業者の調整も進めているような状況でした。
切羽詰まっていた状況でしたが、私はキャンセルしました。

民法の賃料減額の話なんて知ったのは後からです。
でも、賃貸借契約書に設備が書いてないなんて、明らかにおかしいと思いました。
それに、貸主の説明を聞く限りでは、設備を書かない正当な理由が何一つありません。書いても問題ない理由ばかりです。

とはいえ、設備ももちろんあるし、修理をすることも事実なんでしょう。減額請求も行えば応じるのかもしれません。

しかし、貸主がお金に困ったらどうなるでしょうか。
貧すれば鈍する。お金に困れば汚くなることだって、約束を反故にすることだってあるのですから。

あえて、賃貸借契約書に設備を書かないようにしているんだな。どうしても書いてくれない姿勢を見てそう思いました。

こんな貸主を信用できるでしょうか?そこに信頼関係はありますか?

もし、賃貸借契約書に設備が書かれていない。書いてもらえない貸主と出会ってしまったら・・・私としてはよく考えた上で判断することをおすすめいたします。


それでも、入居をしようとするなら、入居時に現況の記録として写真に撮っておく、設備の確認を行った記録を取っておく、その上で貸主に入居時の設備の状態として確認を求めると良いでしょう。